明石農園 明石栄美子さん|甘夏みかんを通じて能古島の魅力を発信し続ける明石さんの想う能古島の未来とは(前編)

福岡市の西方沖に位置する能古島。海に囲まれ自然豊かな島で甘夏みかんを夫婦で作り続け、能古島の魅力を発信するために様々な活動に精力的に取り組み続ける『明石農園』の明石栄美子さんに地元の人でなければ分からないような能古島の魅力や能古島が抱える問題、明石さんが思い描く能古島の未来について語っていただきました。

ー本日はお忙しい中お時間を作っていただき有難うございます。よろしくおねがいします。

 

明石栄美子さん(以下、『明石』):よろしくお願いします。

 

ー早速ですが、簡単に自己紹介をお願いします。

 

明石:能古島で甘夏みかんやニューサマーオレンジの農園『明石農園』を経営しています明石栄美子です。

 

ーありがとうございます。それではまずは『明石農園』についてからお伺いをしていきたいのですが明石さんが農園を始められたのはいつごろから何ですか?

 

明石:えーっと、私が始めたっていうよりはもともと主人の家が農園を経営していて、私が主人の家に嫁いだことで私も甘夏農園に携わることになりました。

 

ーなるほど、明石さんが結婚される前から甘夏農園を経営されていたんですね。

 

明石:甘夏みかんんもそうなんですけど、私が嫁ぐ前は甘夏みかんのほかに豚の放牧をしてたらしいです。ただ私が嫁ぐ前に豚の放牧は廃業したみたいですけど。

 

ー豚の放牧ですか!能古島で育った豚ってその響きだけで美味しそうですけどなぜ辞められたんですか?

 

明石:とにかく豚の飼育管理が大変だったみたいです。四六時中餌を食べるしやっぱり命を扱うので大変だったそうです。船で本土に豚を運んでいるときに豚が海に落ちちゃって飛び込んで助けに行ったなんてエピソードを聞いたことがあります。

 

ーたしかに命を扱うとなると一筋縄ではいかなそうですね。明石さんは出身も能古島なんですか?

 

明石:私は子供のころに能古島に引っ越してきたんです。なので能古生まれではないですけど能古小学校と中学校は卒業してます。

 

ーなるほど、ご主人との出会いはなんだったんですか?

 

明石:もともとは同級生だったんですよ。私は能古島をでて広島に住んでたんですけど、ある時、帰省した時に偶然再会してそれからって感じですね。

 

ー再開して結婚、そして甘夏農家となったわけですね。

 

明石:そう、30過ぎで結婚したので甘夏農家になったのも30歳過ぎてからですね。

 

ー甘夏農家になられて良かったことややりがいって何ですか?

 

明石:やっぱり育てた甘夏が豊作だったときや、お客さんに美味しいって言ってもらえた時は本当にやってて良かったなって思いますね。ただ逆もまたしかりで農作物がだめになって出荷できなくなったりすると1年に1度の収入源がなくなってしまうと本当に心苦しいです。今年がそうで寒害にやられてみかんの出荷が停止になりました。出荷が停止になってもみかんを木から一つ一つちぎらなければならないのでその作業がつらかったですね。

 

ー確かにせっかく一年かけて育ててきた作物が出荷できなくなって収入がなくなるのは大変ですね。

 

明石:そう、ただ出荷停止になったからといって全部が全部だめになるわけじゃなくて状態によっては『のこのしま加工部会』に持って行って果汁や皮の状態にして色んな業者に卸したりはしているんですよ。

 

※のこのしま加工部会とは

 明石さんが中心となり、これまでは規格外と判断された場合は廃棄されていたみかんたちをつかって自分たちで加工品を作れないかという生産者の声から平成24年に明石さんが中心となって発足した会。島内にある7軒のみかん農家がタッグを組んで、果皮のスライス・果汁冷凍などの一次加工や製造業者との商品開発を行っている。

学校給食で子供に出されている『能古島甘夏マーマレード』や能古島のお土産品として人気の夏みかんサイダー『ノコリータ』はのこのしま加工部会で加工された果汁や皮を使って作られている。

(学校給食で提供されている甘夏マーマレード)

(果汁が使用されているサイダー「ノコリータ」)


ーのこのしま加工部会ができたことによって少しでもみかんが世にでるのはありがたいですね

 

明石:そうですね、のこのしま加工部会としての売上もだいぶ上がってきているのでのこのしま加工部会を通して色んな所に能古島のみかんを広めていけたらとは思っています。よかったら加工部会の作業場を見学していきませんか?

 

ーぜひおねがいします!

 

ということでのこのしま加工部会の加工場へ移動、、、、

 

明石:こちらです。

 

ーうわ、みかんのものすごくいい香りがしますね!

 

明石:でしょ~?初めて来られた方はみなさんそう仰ってくださいます。 

ーここで規格外のみかんを加工して皮や果汁にしているんですね。

 

明石:そうです、まずは皮の加工から見ていきましょうか。

 

まずはここでみかんを半分にカットします。そして皮の綺麗な部分をとってザルにいれていきます。

 

 

このままだと皮が分厚いので薄くカットしてバットに移していきます

ーめちゃくちゃ薄いしものすごく綺麗にカットされてもはや職人技ですね(驚)

 

明石:皮をカットしたあと、実の部分を果汁にしていきます。 

明石:みかん一つに対して3分の1程度の果汁が取れるんでこれまで廃棄していたことを考えるとかなり捨てる部分は減りましたね。

 

ー廃棄せずに利活用していくっていうのは国連が掲げる17の指標の『SDGs』のうちの一つの『持続可能な消費と生産パターンの確保』に通じるサステナブルな活動とも言えますね。

 

明石:廃棄するのはもったいないっていう思いと、廃棄するにもやっぱりお金がいるし猪のえさになっちゃったりと大変だからですね。のこのしま加工部会は立ちあげて良かったと本当に思います。

また、品質管理はかなり徹底して行っていて栄養成分や放射線量、菌の量を測る検査も定期的に行っています。

 

ーなるほど、安心で安全な物を届けるためには大事なことですもんね。

 

明石:そうですね、やっぱり自分が育てたみかんなんで安心して食べてもらいたいです。

 

ー環境に配慮しサスティナブルな活動をしながら食卓に安心安全な物を届けているということですね。これからの時代を生き抜くためにも『のこのしま加工部会』の活動っていうのは能古島にとっても非常に重要なものになりそうですね。

ということでここまで明石さんの就農のきっかけや能古島での活動について伺ってきました。自らが中心となってのこのしま加工部会を立ちあげサステナブルな活動に尽力する明石さんがおもう能古島の抱える課題や能古島の魅力について後半では掘り下げていきたいと思います。後半も是非お楽しみに。

明石農園

明石栄美子さん

能古島で甘夏、ニューサマーオレンジ、ビワなど柑橘類を中心に栽培する農園を運営。

のこのしま加工部会をJAと共に立上げこれまで廃棄されていた規格外の作物を加工することで食品ロスを抑制するなどサステナブルな活動に尽力。

みかんの被り物をし『のこのしマン』に扮して島の小学校をはじめとするさまざまな場所で地元の農作物をPRするなどの広報活動も行っている。

 


【明石農園】

住所:福岡県福岡市西区能古島1608-31

TEL:080-8379-4652 

FAX:092-881-2631