ーそれでは後半もよろしくお願いします。
中村甚司さん(以下「中村氏」):よろしくお願いします。
ーこれまで33年間消防団での活動に従事してきたということですが消防団の活動できつかったり苦労したことは何ですか?
中村氏:やっぱり訓練はきついですね。あとは自分たちは普段は別の仕事をしていて、そんな中でどこかで災害が起きた時は自分がどんな状況に置かれていても指令が入ってきて、仕事を途中でとめて行かなければならなかったり、現場に行ったら行ったでそこからなかなか帰ることが出来なかったりと大変です。
ー普段の生活の中で活動をしているので消防署員の方たちとは全然違うわけですね。
中村氏:火災などだとその日に鎮火して終わるのですが大雨による水害になると収まるまでに時間がかかることが多いので長期戦になると本当に大変です。
ーたしかに自然災害となると時間がかかりそうですね。
中村氏:私達への依頼というのは消防署からだけではなく町内の校区からの依頼もあります。行方不明者を捜してくれという依頼などになると非常に時間がかかりますね。昔は山狩りっていって泥棒が山に逃げ込んでそれを追いかけて消防団で山に入るなんてこともありました。
ーすごい時代ですね。
中村氏:そうですね、行方不明者探しでは対策本部を設けて町内会長や消防署、警察と協力して捜索にあたるなんてこともあります。
ーそれを別の仕事をしながらこなすっていうのは大変ですね。
中村氏:どうしても現場から遠い所にいて戻ってこれなかったり、大事な商談の途中で抜け出せなかったりなどはあります。なので出てこれる人が出動することにはなっています。そのため、現場での活動で必要な知識や技術は習得しています。それぞれの作業を分担制にしてしまうと、例えばホースの担当がいてその人物が出動できないとなると消防団全体の活動がストップしてしまいます。そのため、消防団員の全員が全ての事を出来るように訓練を重ねています。
ーなるほど、日々の訓練を重ねて全員がレベルアップすることでそれぞれの負担を減らしていっているわけですね。
中村氏:とくに今年の10月と11月は集中して訓練をしています。というのも新型コロナウイルスのせいで訓練をすることが出来ませんでした。コロナウイルスが比較的落ち着いている今やっておかないとどうなるかわかりませんからね。
ーつづいてなんですが、これまでの消防団の活動の中で印象的だった出来事はなんですか?
中村氏:平成20年に私がまだ元岡の消防団の分団長をしていた頃の話しなんですが、【ポンプ操法大会】という消火活動につかうポンプの扱い方を競う大会があるのですが、その大会で県大会、そして全国大会で優勝したことが一番の思い出ですね。
ー全国大会で優勝っていうことは日本一ってことですよね?すごいですね!
中村氏:ありがとうございます。もちろん消防団だけの力ではなく、消防署にもご協力いただいたり、練習にエアロビクスを取り入れたんですが先生方がシッカリとしたプログラムを考えてくださったりなどいろんな方々のご協力があってこその優勝でした。
ーエアロビクスを取り入れたんですか?消防とちょっとかけ離れているような印象がありますが。
中村氏:この大会に挑むにあたってまず最初に基礎体力の向上と体幹を鍛えることを目指しました。大会の練習は長い期間を掛けて練習をするのでどうしてもケガが発生してしまうです。そこでまずはけがの予防もかねて当時流行していたエアロビクスをを取り入れたところ最初はみんなレベルの低い初心者だったんですが3ヶ月を過ぎる頃には体幹が出来上がって基礎体力も飛躍的に向上したんです。
ーなるほど、まずは資本となる体を鍛えた訳ですね。
中村氏:おかげさまで、夏の暑い日に行う厳しい訓練においてもけが人など出ることも無く、質の高い訓練を実施することが出来ました。これが無ければ優勝はできていなかったと思います。
(日本一を記念して作成された冊子)
ー全国大会で優勝したとなると反響も凄かったんじゃないですか?
中村氏:優勝したことを記念して記念誌が作られたんです。福岡県を代表して全国大会で優勝したということもあって、当時の福岡県知事や福岡市長がコメントしてくださいました。それから、西区の区長から名誉区民の称号も頂いたりして反響は大きかったです。
(冊子には当時の麻生渡福岡県知事、吉田宏福岡市長からのコメントが掲載されている)
ーなるほど、これまでの活動や訓練が評価された証ですね。
中村氏:ありがたい限りですね。全国大会で優勝したことで消防団の間でポンプ操法のお手本の様に皆さんから言っていただけたのも嬉しかったですね。全国のあちこちの消防団が視察に来られたりして交流を深めることが出来たのも大きかったです。
ーいろいろと反響が大きかったわけですね。それでは続いてですが消防団の魅力ややりがいについて教えてください。
中村氏:地域の安心安全を守るんだという使命感をもって活動はしています。先ほども申し上げましたが消防署というのは人数が限られています。その時その時の天候や交通の状況によっては消防署のみでは迅速な対応が難しい場合がどうしても出てきてしまいます。そんなときに地元の消防団が消防署と連携を取りながら出動することで迅速な対応を取ることができ被害を抑えることが出来る非常に重要な活動を私たちが担っていると考えています。
ーたしかにこれまでのお話を伺ってきて地域の安全を守るうえで消防団の存在はとても大きいと感じます。
中村氏:ただ、活動を続けていく上での責任も大きいです。東日本大震災のときに地元の消防団員の方たちが何人も殉職されました。というのも市民を守るために避難場所への誘導などをしているところで津波に飲み込まれてしまったからです。そのときに消防団員を指揮していたのは分団長でした。災害を相手にする活動はどうしても危険が伴います。団長の私を始め、各分団の分団長は団員たちが無事に家に帰ることが出来るように責任を持って指揮をとっていかなければなりませんし安全管理は徹底しなければなりません。
ー火災現場など危険が伴う活動だからこそ一つ一つの行動が重要になってくるのですね。
中村氏:それが団長や分団長の仕事であり責任だと思います。災害活動でいかにきちっと活動をして団員を無事に帰らせる。そのために日々訓練を行うことが重要だと考えています。
ーありがとうございます。ここまで長い時間とても大事なお話を伺うことが出来ました。最後にホームページを御覧の方々になにかメッセージをお願いします。
中村氏:今回のインタビューでご興味を持たれた方はぜひ消防団へ入られてください。すこし厳しいことを言ってしまいますが消防団は仲良しクラブというわけではないのでどうしても上下関係があって上の人の命令を聞かなければならない場面は沢山あります。ただそれは災害に立ち向かう危険を伴う活動をしていく上で非常に大事な部分でもあります。やりがいっていうのは人それぞれですが一緒に地域を守りたいという思いのある方はぜひお待ちしています。
-有難うございます。今日は本当に長い時間有難うございました。
中村氏:ありがとうございました。
【福岡市西消防団団長 中村 甚司 さん】
福岡市西消防団の団長を務め30年以上に渡り私達市民の安全を守るための活動を続けている。西消防団の団長を務めると共に、地元元岡にてアスパラガス農園を運営する農家の顔を持つ。
【福岡西消防署(福岡市西消防団)】
住所:〒819-0161 福岡市西区今宿東1丁目7番12号
電話番号:092-806-0642
FAX番号:092-806-6462
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