ーそれではここからは後編ということでよろしくお願い致します。
松尾:よろしくお願いします。
ー25歳で福岡に戻ってきて『魚嘉』で働き始めたは慣れるまで大変でしたか?
松尾:そこまで大変じゃなかったと思います。というのも、子供のころから店を手伝うことが当たり前で『魚嘉』で働くということが生活の一部だったので福岡に戻ってきて働き始めた時も慣れた作業ばかりだったので当たり前のことを当たり前のようにやるっていう感じでした。
ーなるほど、子供のころからお店を手伝ってきたことが糧になってたわけですね。
松尾:子供のころからずっと家の仕事が第一という生活でした。家の仕事をさぼって遊びに行くなんて言語道断でした(笑)学生の時も帰省したら配達などほぼ仕事をしていたので休みっていう休みはありませんでした。
ー子供のころに配達とかもされてたんですか?
松尾:さすがに子供のころは近所の人の届けるくらいで、店番やラベルの貼付け、商品の箱詰めなどの簡単な作業の手伝いをしていましたね。
ーなるほど、働き始めた当時苦労したことってありますか?
松尾:当時は今と違ってもっとお祝い事の注文が多かったんです。模様細工を施したかまぼこの注文がとても多くて、『松竹梅』の文字を一つずつ手作業で切り出したりするのが大変でした。普通のかまぼこと比べて作業に手間がかかるのと一度沢山の注文をいただくのでとても忙しかったです。ただ手間がかかる一つ一つの単価が高かったので忙しかったですけどとてもありがたかったです。
ー28歳で松尾さんが主体となってお店を切り盛りするようになったとのことですが受け継ぐことのプレッシャーなどありましたか?
松尾:そんなにないですね。子供のころから父から言われていてお店を継ぐことが当然というか当たり前っていう感覚で育ってきたので継ぐことに関してためらいや継ぎたくないなんていう否定的な感情はなく子供のころから手伝いもしてきてたんで勝手もわかってたのでプレッシャーもありませんでした。
ー継いで良かったですか?
松尾:もともとモノを作るのが好きな性格なので、この仕事は自分に向いていると思うし継いでよかったです。正直なことを申し上げるとお店の経営よりもかまぼこを作る事にずっと専念していたいなんて気持ちもあります(笑)
ー生粋の職人気質なんですね。続いてお仕事のやりがいを教えてください。
松尾:やっぱり自分が修行をしてきたお店やそれ以外のかまぼこ屋さんで食べて美味しいと感じたものを自分で吸収してすぐに作ってお店に出せるのがやりがいですね。先ほども申しあげたとおり、モノづくりが好きなので試して商品化して店頭で販売してお客さんの反応をみてトライ&エラーを出来るのは楽しいですね。
ーなるほど、職人気質の松尾さんならではのやりがいですね。厚生大臣賞を受賞されているということで伺っているのですがどういった賞なのか教えていただいてもいいですか?
松尾:正確に言うと私ではなく私の父が受賞しているんですが、年に1回全国のかまぼこ業者が自分の技術を詰め込んだ自身の一品を出品してそれを審査員の方々が審査して賞を決める品評会です。その品評会で最優秀賞に当たる厚生大臣賞を父の作品が受賞しました。
ーそれとても凄いですね。全国大会で優勝したってことですよね?
松尾:そうですね、父は何度か受賞しています。
(厚生大臣賞を受賞した蒲鉾を再現した極上板付きかまぼこ。普段は店頭に並んでいないが事前に連絡をすれば購入が可能。)
ー松尾さんは出品されたことはないんですか?
松尾:一度出品したことがあります。個人的にあまり勲章などに興味がないのでわざわざ出品しようなんて思わないのですが、一度だけものすごく自分が気に入った作品が出来たので出品してみました。
ー結果はどうだったんですか?
松尾:最優秀賞の厚生大臣賞を受賞するには至りませんでしたが、準優勝にあたる水産庁長官賞を頂きました。
ーすごいですね!松尾さんの技術の高さがまた認められたってことですね。
松尾:まさか受賞するとは思ってなかったですが嬉しかったですね。
(水産庁長官賞を受賞したときの盾)
ーそんな松尾さんが切り盛りする『魚嘉』のかまぼこの売りはなんですか?
松尾:かまぼこを始めとして天ぷらやちくわなどの練り製品は機械で工業製品のように大量生産しようと思えばできるんですよ。ただ、他の食品と違って手作業で人の手を加えやすいっていうのも練り製品の特徴なんです。
うちは食感をよくするため原料のすり身に負担を掛けないように機械を使わずにできる作業は可能な限り手作業でやっている。そうすることで魚本来の食感や風味を損なわないかまぼこを作る事が出来る。機械で一気にすべての作業をやってしまうと素材の良さを活かしたものをつくることが難しく、素材本来の食感や風味を楽しんでいただける商品を提供しているのがうちのかまぼこの売りだと思います。
ーありがとうございます。続いてお仕事をしていく上でのモットーをお聞かせください。
松尾:お客さんはうちの店を信じて足を運んでくれるのだから感謝の気持ちを忘れず、商品の値段以上のものをお客さんに届けたいっていう気持ちは大切にしています。
ー明治から地元で愛されつづけている『魚嘉』さんだからってことで来られているお客さんが沢山いらっしゃるんでしょうね。
松尾:ありがたい事にいつも来て下さる顔なじみのお客さんが沢山いてくださるのでそういった方々には特に喜んで頂きたいですね。
ーわかりました。明治時代から姪浜で操業を続ける『魚嘉』さんですが姪浜へ事業をするメリットって何でしょうか?
松尾:古くからの住人が多い地域なので、地元住人の方々に認めてもらえれば支えてくれるのでそういう部分ではメリットじゃないかと思います。それに姪浜は今、大きなマンションがどんどん建っていって他所から引っ越して来られる方が増えているので、人が増えるってことはやり方によってはものすごくチャンスが眠っているんじゃないかと思っています。
ーなるほど、人の数が増えれば増えるほどチャンスが生まれるっていうことですね。
松尾:昔と比べると確かに旧唐津街道沿いの活気はなくなりましたけど、そんなに悲観的になる必要はないんじゃないかなと個人的には思います。
ーわかりました。つづいて話は変わるのですがお休みの日はどのようにお過ごしになられているんですか?
松尾:子供のころから釣りが好きで小川でのフナづりから五島列島での磯釣りまでいろんな魚を狙って楽しんできました。中でもここ30年くらいのめり込んでいるのが渓流のヤマメを毛バリで釣るフライフィッシングです。大阪で修業を負えると北陸や信州方面と釣り歩いたり、北海道の修業を負えると道内の皮や東北地方へ釣り巡ったりしました。ドライブが好きですから好きな音楽を聴きながらお気に入りの宮崎方面への釣りが今のとても大切なひとときです。
ー楽しそうですね!松尾さんが釣った魚とか見てみたいです。
松尾:釣りやかまぼこ作りのネタをときどきツイッターで公開しているのでぜひ@uokakamaboko をチェックしてみてください。
ーありがとうございます。それでは姪浜の魅力についてもお伺いしてもいいですか?
松尾:交通の便も良いし住む環境としてとてもいいと思いますが、とにかく地元のものがいろいろ食べられるっていうのは姪浜の魅力だと思います。魚は安くて美味しいものが手に入りますし糸島の野菜や早良の野菜なんかも近いので簡単に手に入ります。
生鮮品ってスーパーに行けば全部完結出来てしまうけど、地元の魚屋や八百屋に行けば店主がこだわって仕入れたものを手に取って買って食べるのでは同じ食事でも全然違ったものになると思うんですよ。売っているものから季節感なんかを感じたりすることは大事だと思います。
ーありがとうございます。魚が美味しいと仰っていましたが何かおススメのお店などありますか?併せて姪浜のおススメスポットも教えていただきたいです。
松尾:姪浜にはいろいろと美味しいお店があるんですが『御園』さんや『みなくち』さん、『なか山』さんや『勝栄』さんなどですかね。昔からありますし、どのお店もとても料理が食べられます。
おススメスポットってなると愛宕山ですね。見晴らしがとてもいいです。室見川や博多湾など福岡の街並みを一望できますし能古島なんかも眺めることができるので福岡の立地をつかむのにも良い場所ですね。
それから小戸公園も良いですね、子供たちも遊べますし、海もあってとても気持ちが良いです。
ーありがとうございます。最後の質問ですがホームページをご覧の方々に何か一言お願いします。
松尾:美味しい食べ物もあって自然環境もありとてもいい要素が揃っている街だと思います。ぜひ姪浜へお越しの際は『魚嘉』へお立ち寄りください。
ー今日はありがとうございました。
松尾:ありがとうございました。
魚嘉かまぼこ
松尾 達哉さん
明治時代から100年以上の歴史を誇る老舗かまぼこ店の4代目店主。厳選素材を使用し石臼練り・手打ちなど昔ながらの製法で優しい味わいと喉越しの良さが自慢のかまぼこを製造・販売している。
魚嘉のかまぼこはお店以外でも下記のお店にて購入できるのでぜひ一度お食べ頂きたい逸品である。
(取扱い店舗)
・イオンストアマリナタウン店・ハローデイ姪浜店・じょうもんさん福重市場
・じょうもんさん入部市場・じょうもんさん周船寺市場・地下鉄姪浜駅ステーションフード
・スーパーサングリン
【魚嘉かまぼこ】
住所:福岡県福岡市西区姪の浜3丁目5-10
TEL・FAX:092-881ー0102
営業時間:10:00~18:30
定休日:日曜日